日本建築医学協会「設立主旨」
 国家財政における医療費の負担が毎年増加し、健康保険制度の破綻・崩壊が取りざたされている昨今、医療において「病気をいかにして治すか」以前に「いかに人を病気にさせないか」が緊急の、そして国家的な課題として浮上してきています。

  そこで問題になってくるのが年々増加し続けている生活習慣病(※)です。現在、日本人の60パーセント以上が三大生活習慣病である「がん」「脳卒中」「心筋梗塞」によって亡くなっています。この生活習慣病と住まい環境とは密接な関係にある、ということが分かってきました。

  つまり住環境や職場環境から来る様々な環境ストレスが、生活習慣病の大きな原因と考えられるのです。

逆に言うと、「住人や職員を病気になりにくくする住環境や職場環境を作ることができる」その可能性が見えてきたのです。「住環境・職場環境を改善することを通して積極的に病気を予防する」これこそ予防医学・未病医学の根幹を成すテーマと言ってよいでしょう。このテーマに取り組む医学として当協会は「建築医学」を提唱します。

  近年、住環境を巡って様々な問題がクローズアップされるようになりました。例えば、シックハウスなど室内における化学物質の問題が脚光を浴びています。また世界各地で、電磁気、地磁気、臭い、色彩、立地条件などが原因と考えられる疾患が数多く報告されています。

  さらに2005年末に起きた耐震強度偽造問題は、建築業界の住人不在の体質を浮き彫りにし、従来の建築のあり方に対する問題意識が高まりました。

  当協会では、建築学、住居学、医学および環境工学の専門家が持つ知見の融合・共同研究により、環境と生体との相互作用と有機的な繋がりを解き明かし、住環境の改善に必要なデータの収集および情報提供を行います。さらに「住空間・職場空間を心身が癒される場とする治療体系の構築」とその啓蒙普及を目指します。それらを通して「一人一人の脳が活性化し、創造性が高まり、生きることの意義や目的を見出していくこと(QOLの向上※)に繋がっていく」と当協会は考えます。

※生活習慣病
毎日の生活習慣のつみ重ねによってひき起こされる病気。代表的な生活習慣病は、高脂血症、高血圧、糖尿病などに加えて、肥満、痛風(高尿酸血症)、循環器疾患、肝臓疾患、がん、骨粗鬆症、歯周病などがある。

※QOL(クオリティ・オブ・ライフ)
広義のQOLと狭義のQOLがある。広義のQOLは人生の質とも訳され、この場合のQOLの向上とは患者のみならず市民の健康増進を図る事を意味する。狭義のQOLは生活の質とも訳され、この場合のQOLの向上とは患者の日常生活をどれだけ苦痛の少ないものにするかという意味で用いられる。

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